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Vol.31 (2004/5/10)

特許訴訟を税務が斬る!


1.続発する特許訴訟について

今年に入り、大きな特許訴訟が相次ぎ、企業内研究者の勝訴と共にその発明対価の額が注目されています。元従業員に対して、日立製作所では1億6,300万、味の素では1億9,000万、日亜化学工業は請求通りの200億です。今や、企業の研究開発に関しては研究者に追い風が吹いています。

2.青色LED訴訟の概要

青色発光ダイオードの開発者の中村修二教授が、この技術の開発時に勤務していた日亜化学工業を相手に、(1)この特許権の帰属について日亜化学工業に譲渡したものではなく、自分に帰属すること、(2)仮にこの特許権の帰属が日亜化学工業にあるとした場合においても、その相当の対価の支払いを求めることの内容で訴えを提起しました。

3.発明対価は何所得?

従来、わが国では従業員が業務上有益な発明や考案をした場合、企業はその報奨や表彰として、社内規程に則りその対価を支払うのが一般的でした。これは雇用契約に基づき支払われる対価である為、原則として「給与所得」として課税されるものになります。しかし、企業が従業員に対して支払うその内容と支払い方法により、課税対象となる所得自体に変化が生じることになります。

4.特許権を譲渡した場合

今回の青色LED訴訟のように、特許自体の帰属が問題となり、その特許を譲渡するかしないかが焦点となる場合について考えましょう。まず、企業が従業員の発明した特許技術について、特許出願以前に企業が買い取り、企業側が出願をした場合です。この場合、その従業員に対してその譲渡対価として一度に支払われる金銭の額は、「総合課税の譲渡所得」として課税されます。つまり、他の給与所得等と合算された額に累進課税されることとなります。

また、企業側が買い取った特許権について、その成績に応じて継続的に支払われる金銭については、特許権の譲渡対価を追加的に支払っているようにも考えられますが、継続性があることから「雑所得」として総合課税の対象となります。

さらに、特許権を企業が買い取らず、所有する従業員に対して使用料を支払う場合も同じく「雑所得」として課税されることとなります。

5.上手な対価の受取り方

今回の訴訟で中村教授が受け取った対価を200億、仮に訴訟費用を50億と想定した場合、中村教授の実質所得は150億です。これを、特許権の譲渡として計算すれば、長期譲渡の1/2と50万控除が適用され、最高税率50%が課されることとなり、税金は(150億−50万)×1/2×50%で約37億円となりますので手取額は約113億円になります。

これを中村教授が日亜化学を退職せずに、会社と揉めず、200億を生涯給料に上乗せして支払われたと仮定します。200億を毎年10億ずつ20年に分割して支払われるとすれば、10億の給与に対して取られる税金は{10億円-(10億×5%+170万=給与所得控除)×50%}×20年で約95億円となりますので手取額は105億円になります。

訴訟をしなかった場合に支払われるであろう額と実際の訴訟費用額が想定しづらいところですが、上記の差額8億(113億−105億)は、お互いの遺恨と互いに失ったものがあるにはせよ、生涯受取額としては大きい差が生じていることになります。