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Vol.46 (2005/8/1)

相続放棄も1つの選択肢


1.ことの始まり

外資系金融機関で働くAの父親が亡くなりました。母親は5年前に父親と離婚しています。そのため、相続人はAと弟のBだけとなります。四十九日の法要も終わり、財産を全て洗い出しました。

現金 1億円  自宅 1億円(建物を含む)
父親が社長として経営していた会社の株式 2億円

この財産以外に、父親の個人借入が1億円あります。また、会社の借入金5億円に対しては、社長として債務保証していました。

2.兄弟間の確執

2人の兄弟は話し合いを行いました。まず、兄Aは、弟Bが役員として父親を手伝ってきた経緯から会社を継ぐだろうと予測しています。また、自宅も弟Bが父親と一緒に暮らしてきたのです。そのため、自宅と株式は弟Bが相続すると勝手に考えました。そこで、兄Aは現金1億円だけ相続したいと主張したのです。しかし、弟Bには不満がありました。

 自宅1億円+株式2億円−借入金1億円=2億円

が弟Bの財産です。相続税は原則として、現金で払います。しかし、自宅と株式の売却は事実上不可能であり、個人財産を取り崩して払うのです。また、5億円の保証債務も背負うのです。

兄弟間では結局、話し合いがつきません。しかし、借入金の返済の相談で銀行に行ったときから状況は変わりました。相続とは、財産だけを分けるもので、借入金などの債務(債務保証も含めて6億円)は、原則、兄と弟で半分ずつ自動的に負うと分かったのです。

銀行としては、両方に全額連帯保証して欲しいと言ってきました。しかし、兄Aとしては連帯保証する気持ちはありません。もちろん、債務保証の5億円は会社が倒産しなければ関係ありませんが、経営に全く関係のない兄Aは不安です。

3.相続放棄への迷い

結局、兄Aは相続放棄することにしました。これは、相続が発生してから3ヶ月以内に家庭裁判所に届け出ることで承認されます。

弟Bは、兄Aの相続放棄によって、財産3億円、債務保証も合わせた借入金6億円全てを相続しなければなりません。

ここで弟Bは会社の状況を考えました。現在の会社の借入金5億円は工場の建築資金や製品在庫が多すぎる結果です。会社の売上も以前に比べれば半分にまで落ちています。このまま相続するか、相続放棄して人生をやり直すか迷いました。今まで、親の会社をずっと手伝ってきたのです。ただし会社が倒産すれば、相続財産どころか、現在、自分が持っている財産まで全て失います。

4.新しい財産を発見

ところが、数日後、母親が尋ねてきました。実は、会社が父親に対して掛けていた生命保険の証書を持っているというのです。自分が亡くなった時のために、会社を守る目的で加入したようです。死亡保険金は2億円です。また、受取人は、会社の承継者と考えていた弟Bの名義です。

そこで、弟Bは会社の純資産額を会計事務所に頼んで、試算してもらいました。すると、工場の土地は産業廃棄物もあり、ほとんど価値がありません。会社としても大きく債務超過でした。そこで、相続放棄の手続きを決断しました。これにより、現預金、自宅、会社の株式はすべて放棄され、国の管轄になります。会社は、債権者との話し合いで清算されます。しかし、生命保険は固有の財産として、相続放棄しても弟Bのものになりました。弟Bは、このお金で新しい自宅を購入しました。そして、新しい会社を設立し、以前の会社の社員を雇い入れたのです。これで、父親の生命保険への加入目的は達成されたと言えるでしょう。


今月のまとめ